高齢者の運転について考える

今日は「高齢者の運転」について考えていきます。

皆さんもご存じだと思いますが、ここ数年、高速道路を逆走したりアクセルとブレーキを踏み間違えたりするといった、高齢者の運転の事故がいくつも報じられています。

15年度の警察庁の統計によると、75歳以上の高齢者が起こした死亡事故が全体の1割超も占めていたとの事となっています。1割越えというのが多いのか少ないのか分かりにくいと感じますが、死亡事故の総数そのものは年々減っているが、この年代の死亡事故の件数は増加しており、比率は年を重ねるごとに大きくなっているようです

先月28日に起きた、87歳の高齢者が軽トラックで集団登校の最中の小学生の列に突っ込み小学1年生の児童が死亡した事故はまだ記憶に新しいと思います。この高齢者が認知機能に問題があったかどうかはさだかではありませんが、「高齢者の運転」ということについて考える必要を感じました。

 

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高齢者の運転に関しての制度の移り変わりを説明していきます。2009年の道交法改正で、75歳以上は3年に1度の免許更新時に認知機能検査が義務付けられました。しかしながら、この時点では、検査で認知症の恐れがある」とされても、そのまま更新出来るという何の為に行っているのかよくわからない制度となっていました。その後、2015年の改正において、やっと認知症の恐れがある」とされた高齢者は医師の診断が義務付けられ、認知症と診断されれば、免許の停止や取り消しが行われるようにするとされました。しかしながらこの改正は2017年3月から施行されることになっています。

 

私は医療関係の仕事に就いており病院にて仕事を勤務しています。仕事柄、認知症を患う高齢者接する機会が非常に多くあります。その経験から考えるとこの3年ごとの認知機能検査というのは、事故を減らすという視点から考えると十分ではないと感じています。確かに認知機能の低下が緩やかに年単位で起こっていく方も多くいます。このような方は3年に1度の検査で良いかもしれません。しかしながら、認知機能の低下は、骨折など別の病気で入院したのをきっかけに急に認知機能が低下した人、入院とまでいかなくても体調が優れず家に閉じこもり気味となり認知機能の低下が急速に進行していった人、等多くのパターンがあります。そのような、急速に認知機能の低下を呈した高齢者に対しては、3年に1度の検査では、認知機能の低下から運転免許停止までの期間が長く、事故を起こしてしまうことがありえると考えられます。

 

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じゃあどうしたらいいのか?

今から私の考える高齢者の運転免許の案をいくつか載せていきたいと思います。

①75歳以上の高齢者に対し、毎年認知機能検査を含む運転免許更新試験を受けてもらう。

②運転免許を一律75歳までとし、75歳に達したら免許返還を義務付ける。

③75歳以上の高齢者は夜間や高速道路の運転は制限。今まで通り3年に1度認知機能検査を含む運転免許更新試験を受けてもらう。

④75歳以上の高齢者は夜間や高速道路の運転は制限。毎年認知機能検査を含む運転免許更新試験を受けてもらう。

 

他にも複合案なども考えられますが、あえてこの4つの案で考えていきます。

個人的には④の案が最も現実的な案だと考えています。②の一律75歳までといった案でも高齢者の事故は減らせると思います。しかし、同じ75歳でも仕事をしており若々しく元気な人から、認知の低下を呈し活気を感じられない人と様々となっています。そのことを考えると、年齢で返還を強制するのは元気な高齢者に対して酷な気がします。③の運転できる時間、場所を限定する案では、高齢者の身体的特徴から生じる視力の低下(特に暗い環境で見えにくい)や瞬発力・反射神経低下から生じる事故は減らせると考えられます。しかしながら、最近多く聞かれている、認知機能の低下が原因と考えられる日中に街中で起きている事故を減らす効力はないと考えられます。その為それぞれのいいとこどりの④の案が望ましいと考えました。

 

しかしこのようなことを言うと決まって「買い物ができなくなり生活が出来なくなる」「運転という楽しみを奪わないでくれ」といった意見が出てきます。しかしながら車という生身の人間と比べて圧倒的に強い機械を運転するという事を自覚し、年を重ねると誰しも車の運転は危なくなってくるという現実は受け入れていく必要があると考えられます。

「買い物ができなくなり生活が出来なくなる」といった意見に対しては、国や地域が協力して、現在も過疎地では行われているようなトラックを用いた訪問型のスーパーのようなサービスを増やしていくことや生協(コープ)が行っている注文した商品を直接家に届けてくれるサービスの拡充に努めていくことや、バスや電車といった公共交通機関の充実が必要と考えられます。

「運転という楽しみを奪わないでくれ」といった意見に対しては、酷になりますが残念ながら他の楽しみを探して頂くしかないと思います。

 

私の意見のまとめとして、高齢者の事故を減らすためには

道路交通法にて「75歳以上の高齢者は夜間や高速道路の運転は制限する。また毎年認知機能検査を含む運転免許更新試験を受けてもらう。」といった制度の改正が必要と考えます。またこの改正をスムーズに行うためにも、田舎のような地域で暮らす人へのケアを忘れずに行い、車が無くても生活を続けられるような社会やサービスの仕組みを作っていく必要があると考えました。

 

最後に、最近では「事故ゼロ」を目指す取り組みとして、自動運転車の開発が進められています。本当にこのような技術が現実のものになった場合は、上記したような高齢者の運転事故も無くなくなりますので、大いに期待し注目していきたいと思います。